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「国土構想」部会が呼びかけ第一弾
「人口減少危機を直視せよ」に関する記者会見を開催

令和国民会議(通称:令和臨調、事務局:日本生産性本部)の「国土構想」部会は人口減少という現実と課題を共有し、地域のあり方を含む日本社会の未来像を提案する呼びかけ第一弾「人口減少危機を直視せよ」をまとめ、7月5日都内のホテルで記者会見を開いて趣旨説明を行いました。呼びかけでは、日本の新たな未来像として「人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる」社会を示しました。今後、知事や市区町村長などの自治体首長や、学生など次世代を担う若い世代などとの対話を展開します。

記者会見の様子 関連資料

「人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる」社会目指す

記者会見には、「国土構想」部会の共同座長を務める永野毅 東京海上ホールディングス取締役会長、山田啓二 京都産業大学教授/元全国知事会長、板東久美子 元消費者庁長官と、同部会主査を務める宇野重規・東京大学教授、伊藤正次・東京都立大学教授が出席しました。

記者会見は板東氏が進行役を務めました。永野共同座長が冒頭あいさつした後、宇野主査が呼びかけ第一弾「人口減少危機を直視せよ」の本文趣旨を説明しました。本呼びかけでは、日本社会が直面する最大の危機の一つであり、避けられない人口減少という現実を正面から受け止め、2100年を見据えた長期的視点から、人口減少に適応した日本社会のあり方や理念を提起しています。

サブタイトルの「人が成長し、産業がかけ合わさり、地域がつながる」が示す通り、これからの日本の地域社会の未来像を考えるキーワードとして、「人」「産業」「地域」の3つの軸を挙げ、「国土構想」部会のメンバーを3つのチームに分けて、新たなフューチャーデザインを提案しました。

宇野主査は「提言は2100年というずっと先のことだけを考えているわけではなく、その間の具体的なロードマップを描くことが肝心だと思っている。若い世代とともに頑張っていく覚悟であり、そのためのポジティブな未来への投資や、誰もが参加して能力を発揮できる社会を一緒につくっていきたい」と述べました。

この後、山田共同座長が今後の活動について説明しました。山田共同座長は「私たちの社会は厳しい状況にある。インフラの前のインフラが壊れようとしており、日本自体が重い病に罹っている」と危機感を表明した後、日本の病の総合的な状況を把握し、処方箋を示すことが重要であるとの考えを示しました。

そして、日本病が最も進行している地方の人々と課題を共有し、すべてのステークホルダーと問題意識を共有することを目指すとし、次のステップとして、知事連合、市区町村長のメイヤーズ連合、若者、国会議員、マスコミと、この呼びかけを基に対話を行う方針を示しました。

山田共同座長は「地方は住民サービスを維持できるのか、出生率が改善する見込みがあるのか、外国人に対し、教育や生活をどう提供するのかといった課題に対し、みんなで社会のあり方やビジョンを考えていかなければならない。この段階で具体的な対策を出していないのは、まさにそれは現場との対話の中で、ビジョンを含めて話し合っていかなければならないからだ」と述べました。

人口減少未来をデザインし、バックキャストで準備する
永野毅 共同座長発言要旨

記者会見の冒頭、「国土構想」部会の永野共同座長が、呼びかけ第一弾の目指すところと、部会メンバーの思いについて述べました。要旨は次の通りです。

提言の「はじめに」の中で、「理念となる哲学」というキーワードを記載した。「国土構想」部会の議論の中で大切なことは、日本国民の主体性、そして、多様性にあるということであり、それは議論の最初からそう考えてきた。国民が我が事として、地域や国の課題について主体的に考えることが、国力や国の豊かさ、幸せにつながっていくと思う。

若い人たち、高齢者、障害者、女性、外国人など、多様なバックグラウンドや考えを持つ人たちが、互いに気づきを与えて、刺激を受けあうことで、一人ひとりの内発力や主体性が生まれてくる。そういうものが、地域社会や日本の未来、すなわちフューチャーデザインをつくり出すうえでの原動力になる。

今回の提言は、「人」、「産業」、「地域ネットワーク」という3つの軸で論じている。とくに若い世代が将来に希望を持てるような新しい国のカタチやビジョン、哲学を明確にすることで、国民の主体性を引き出すような触媒の役割を果たすことが、令和臨調の使命であると考えている。

「国土構想」を考える上での最大の課題は人口減少にある。人口減少の問題は、その数が少ないこと自体ではなく、減少のスピードによって、社会に大きな歪みが生じることにある。人口5000万人に満たない国家は世界に数多とある。人口が少ないことと、幸せではないこととはイコールではない。

人口が急激に減少する社会をフューチャーデザインして、バックキャスティングで、今から何が必要で、何を準備するのかを議論し、その上で、みんなで新しい船に乗り移っていくことが大事だ。

日本がこれからも魅力ある国、そして、若い人たちから選ばれる国になるためには、急速な人口減少というシビアな現実を直視し、国民全体で共有しなければならない。その上で、大量生産・大量消費に代表される物質社会や効率化、分業化、標準化といった人口が右肩上がりの時代の価値観から、人口減少時代に即した価値観にパラダイム転換すべきだ。

人口減少時代には地域社会にフォーカスした日本をいかにつくるかを考えるべきだ。マルチタスクで多能な個人や、創造性が豊かな個人が求められる時代になるだろう。また、経済だけでなく、自然、文化との共生や人間中心の市民社会をいかにつくるかという視点も大事になる。そういった課題を受け身ではなく、自ら変えていこうと思える人材が必要だ。

最も重要な意識転換は、温かい社会や幸せなコミュニティをつくるために、経済をどう回していくかという発想だ。「良い経済か、良い社会か」という二項対立ではなく、「経済は、良い社会をつくるためにある」という目的をしっかり意識した社会をつくることが重要だ。

人口減少はピンチに見えるが、むしろ変革の絶好の機会と捉えるべきであり、前向きに立ち向かっていきたい。国民一人ひとりに、我が事として考えてもらうにはどうしたらいいか。対話して、論議して、意見を気楽にやり取りするなかで、「そうだったのか、それなら自分でも社会を変えられるかもしれない」と思ってもらえるように、紙づくりでない合意形成や世論喚起につなげたい。今回の呼びかけはまさにその出発点である。