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提言「『長期財政推計委員会(仮称)』の早期創設を訴える」記者会見 開催報告
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令和国民会議(令和臨調)は1月30日、独立性の高い中立的立場から、長期視点で財政政策と財政の持続性の両立を図る第三者機関「長期財政推計委員会(仮称)」の早期創設を求める提言を公表しました。少子高齢化と人口減少が進む中で、将来への不安を抱く若い世代の声に応え、複数世代にわたる長期的な財政の姿を予測し、それを踏まえた財政運営を行う必要性を訴えました。
「長期財政推計委員会(仮称)」の早期創設を
提言「『長期財政推計委員会(仮称)』の早期創設を訴える―より良い未来を築く財政運営の実現に向けて―」を公表した記者会見には、運営幹事の平野信行 「財政・社会保障」部会共同座長、中空麻奈 同部会共同座長と、小林慶一郎 同部会主査、伊藤由希子同部会主査が登壇しました。
長期財政推計委員会は、国会に設置して独立性・中立性を確保するもので、平野氏は「政治資金の透明性を確保するために国会に設置することが議決された『政治資金監視委員会』の例にみられるように、制度的にも独立財政機関を国会に常設することに道が拓かれた。与野党で知恵を出し合い、今通常国会中に法案成立をなし遂げるべきだ」と訴えました。
同委員会の基本的な機能は、①30年程度の長期で財政収支、債務残高および国民負担等を継続的に推計する、②予測から得られる結果について経済面での妥当性や持続可能性を評価する、③政府の経済財政などの見通しについて独立した中立的な観点から評価する、④政策の長期的な財政面での影響を検証し国会での議論に供する、の4点です。
組織については、国会に党派性のない中立的な委員会として常設し、委員長および委員は、広い経験と高い専門性を有する者数名で構成すると提言。委員の任期は、中立性確保の観点から5年程度とし、委員と事務局は国会職員の定員に上乗せして相応の財政措置を講ずるものとしました。
OECD加盟31カ国で設置
欧米を中心として「独立財政機関」(IFI)の設置が相次ぎ、現在OECD加盟38カ国のうち、31カ国で設置されています。2008年の世界金融危機後に各国で導入が相次ぎ、EUは2013年からIFIの設置を加盟国に義務付けています。
内閣府は、2034年度までの10年間の中長期の経済財政に関する試算を発表しています。ただ、小林氏は「政府による推計は目標として設定されているケースがあるなど、楽観バイアスが懸念されるほか、期間も10年と短い」と述べました。
また、内閣府は2060年度までの35年間の経済・財政・社会保障に関する長期推計を発表していますが、「2060年度までの長期見通しは評価すべきだが、単発であり、独立性の高い中立的立場から定期的・継続的に長期推計を行う必要がある」(小林氏)とより独立性の高い中立的な立場から継続的に推計を行う必要性を訴えました。
透明性高め楽観バイアス排除
小林氏は「米国や英国のIFIの長期見通しの推計は、民間のエコノミストの推計と比べると、GDPやCPIなどの数値がほとんど一致している。それに対して、日本政府の中長期の推計と民間のエコノミストの予測の差は平均して0.3~0.4%の違いがあり、政府側の方が楽観的になっている」と指摘しました。
英国で2022年9月に起こったトラス・ショックは、トラス首相(当時)が政権の目玉として打ち出した大型減税策が英国の独立財政機関であるOBRの予測に基づいておらず、信頼性を欠いた結果、市場からも厳しい判断を突き付けられ、トラス首相は退陣に追い込まれました。
伊藤氏はトラス・ショックを教訓に、「政策を考えることは重要だが、長期的な影響をきちんとチェックする機関がなければ日本における健全な民主主義は成り立たないのではないか。今再び、この提言を提出することに関し、緊急性と必要性を感じている」と訴えました。
中空氏は年収103万円の壁の見直しの議論を念頭に、「様々な出来事に、どういうことが起こっているのか、データで示す組織がないことが問題ではないかと思う。世論を形成する上で、様々なデータを出し、関心を持ってもらうことを促すことが重要だ」と指摘しました。
平野氏は「財政は国家としてのビジョンに基づく戦略的な政策を実現するために、財政資源をどう配分するかを決めることであり、限られたお金の優先順位を明確にして、いかに生産性高く使うかが重要だ。それを支えるインフラとして、長期財政推計委員会の設立を提案している」と述べました。
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