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提言「日本を解き放ち、組み替える」に関する記者会見開催報告

令和国民会議(令和臨調)は2月5日、都内のホテルで記者会見を開き、人口減少や自然災害に適応した持続可能な社会に向けて、多様な生き方・働き方へのパラダイムチェンジを求める提言「日本を解き放ち、組み替える―多様な生き方・働き方へのパラダイムチェンジを通じて、人口減少と自然災害を乗り切る―」を発表しました。

提言「日本を解き放ち、組み替える」 記者会見の様子

「人」「国土」「国と地方のあり方」の三本柱

会見には、運営幹事の永野毅 「国土構想」部会共同座長、山田啓二 同部会共同座長、板東久美子 同共同座長と、宇野重規 同部会主査、伊藤正次 同部会主査の5人が出席。板東氏が概要を説明し、永野氏が提言に込めた思いを述べ、山田氏が要旨を、宇野氏と伊藤氏が各論をそれぞれ説明しました。

提言は2023年7月の「人口減少問題を直視せよ」と題した呼びかけに続く第二弾で、人口増加を前提として機能不全に陥りつつある日本の社会・組織のあり方や制度を見直し、持続可能な社会にパラダイムチェンジすることを提起したものです。人々の潜在能力や資源を解き放ち、組織原理を変革し、誰もが個性を発揮できる社会に向けて、「人」、「国土」、「国と地方のあり方」を三本柱として提言しました。

提言1「まず『人』を解き放とう」

子どもたちに一定水準の教育水準を身につけさせることに重きを置いた教育から、それぞれの子どもの個性や特徴に基づくオーダーメードの教育への転換を促すなどの教育改革を訴えました。ワーク・ライフ・ソーシャルのバランスを実現する生き方・働き方のパラダイムチェンジを促し、複数の拠点を行き来する多拠点生活(マルチハビテーション)や、個人がマルチタスクを担う多能化社会の実現への期待を示しています。

また、DXを単に社会を便利にするツールではなく、人を解き放つツールにすることで、バリアフリーで包摂的な社会を実現すべきであると指摘。「人口減少という危機を逆手にとって、いまこそ、人の可能性を飛躍させる社会の構築に取り組むべきだ」と呼び掛けました。

このほか、外国人政策については、「外国人を単なる労働者としてではなく、日本に多様性とイノベーションをもたらす市民として、より積極的に受け入れるための政策を確立する」ことを求めています。そのうえで、出入国管理のみならず、教育や社会保障、労働といった関連分野を総合し、責任ある外国人政策の推進体制を確立する必要性を訴えました。

提言2「『国土』の利用方法を変え、資源を解き放とう」

人口減少という新しい時代に適用するためには、「分散と集約」による、危機に強い国土構造への転換を推し進める時期に来ているとし、「災害に強い国土構造への転換は最も喫緊の課題である」と指摘しました。

首都圏が大規模災害に見舞われる場合を想定し、政府拠点の複数化などリスク分散型社会の構築に取り組む一方で、過疎化が進んだ地域では、防災や医療の地域中枢機能を整備しつつ、支え合いによって人命が守られるように集約化とネットワーク化の推進が必要と提起しました。

また、地域からの産業革命を進めるため、縦割りの垣根を取り払い、横串を通した相互連携を推進(「かけ算」)することが重要とし、「硬直的な組織原理から人材・技術・資源を解放し、社会課題の解決につながるプラットフォーム」の構築が必要と訴えました。

さらに、「空き家・空き地や放置山林・農地、所有者不明土地問題など、所有権の厳格な適用はすでに乗り越えがたい壁に突きあたっている」と指摘。脱炭素や食糧安全保障の確保のためにも、所有と利用を分離し、社会の安全・利便を実現する方向に舵を切ることを求めました。

提言3「『国と地方のあり方』を考えよう」

地域社会のマネジメント組織についても、より自由に活動する住民に対応するため、広域化や協業化の推進、都市と農村の連携、官民によるローカルマネジメント法人の設置などによって、従来の地方自治・分権の枠を超える組織や関係へと転換することを求めています。

また、「分散と集約」を基本とする新たな国土構想の下、「地域の個性と主体性を発揮できる多様性を持った自治体のあり方を今こそ実現したい」とし、最も効果的なガバナンスの範囲や地方分権のあり方を税源や権限の委譲を含め、過去にとらわれずに柔軟に見直すことを求めています。

国土構想委員会を国に設置

この変革を実現するため、官民が一体となって国のあり方を議論し、長期的視点から国土政策を推進・チェックするための国土構想委員会(仮称)を国に設置。各省の縦割りを排し、人口減少時代に国民が団結して危機を乗り切るための推進体制を構築することを求めています。

永野氏は、福沢諭吉が著書に書いた一文である「立国は私なり。公に非ざるなり」を紹介したうえで、「国民一人ひとりが社会を良くしたいと思う気持ちこそ、この国を動かす原動力になる。今回の提言は、国民を鼓舞し、主体性を引き出すことを目指している」と述べました。